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悲しき退団18

こんな光景はみたくなかった。
劇場の袖で芝居をみながら
湖条はみじめな思いで一杯になった。

入院して一日千秋の思いでリハビリに励んだ。
医師からは無理をするなと言われ、それでも
頑張るしかなかった。
一日も早く復帰しなければ・・・私の舞台が奪われてしまう。
ファンクラブも家族も気をつかって舞台関係のものは
一切そばに置かなかったけれど、でも自然と
話題は入ってくる。
季節はどんどん移り変わっていくようだし、
カレンダーの数字もどんどん進んでいく。
焦りと思うように動かない体を抱えて
それでも必死にリハビリをするしかないのだった。

湖条が何とか(無理やり)退院出来たのは千秋楽の
一週間前だった。
病院からかけつけたのは稽古場。
理事長への挨拶もそこそこに稽古着に着替える。
しかし、足はやっぱり思うように動くはずがなかった。
元々体力も落ちているし、退院したばかりだし。
それはわかっていても悲しかった。

芝居に出るのはやはり無理だろうという事で
湖条はショーの最後の場面一つとフィナーレの
階段おりだけ・・・その階段も無理という事で
セリ上がり、羽根は負担なので肩につける羽根を
使用する・・・と決められた。
振付家は足に負担がかからないような振り付けを
必死に考え、歌唱指導の先生は、とにかく声を出させる
事に集中した。
衣装部はフィナーレに似合う羽根を一生懸命に考えて作り
ブーツの底も多少低くした。
これだけ至れり尽くせりをしてくれたのは劇団のわずかながらの
温情か。

二日間の稽古を終えて、初めて劇場に姿を現した時、
車いすに乗っての登場だったが、劇場を取り囲む全ての人から
拍手が沸き起こった。
本当に温かい拍手で、思わず胸が熱くなる。
特に湖条のファンクラブの面々はこの時を待ってましたと
ばかり花束を渡し、手紙を渡し、そして得意げに拍手し
中には泣きだす子もいた。
湖条の車いす姿はどこまでも痛々しく見えたのだ。
喜びは一転不安になる。
(車いすに乗っている状態で大丈夫なのだろうか)
という不安だった。

その不安を打ち消すように湖条はにっこりと笑って手を振った。
ありがとう。大丈夫だからね」
そう大声で叫ぶとわあっと歓声があがった。
楽屋前には氷高始め組長や組子が揃って出てきて
拍手して迎えた。
氷高は真っ先に車いすを押してくれる。
待ってたんですよ・・・・本当に」
みんなしくしく泣いていた。
うん・・・ごめんね」そう答えるしかなかった。

今は迎えてくれた全ての人に感謝しなくてはならない。
けれど・・・
実際に自分がいない舞台を見ていると、別な感情が
わき上がってきたのだ。

今まで、あの舞台に立つ事を当たり前のように思って来た。
毎日毎日、震災の時ですら、すぐに再開するだろうと思って
さして心配もしなかった。
舞台に立つ自分。この歌劇団で演じ、そして歌ったり踊ったり
する自分はそれが仕事で当たり前なのだった。

けれど・・・今、自分がいない舞台の上でみんなが
楽しそうに演じている。
その姿を見る事になるなんて思いもしなかった。
排除されたというか、押し殺されたというか・・・
惨めというよりそれは信じられない光景に見えた。

悲しみが襲ってきた。
そして猛烈な怒りが・・・・
湖条はどんどん唇を震わせ、ほほから涙が落ちるのを
ぬぐいもせずに舞台を見つめていた。

# by fhiragi2006 | 2009-07-22 17:51 | 虹の飛翔

悲しき退団17

芝居もショーも終わったあとの劇場は殺伐としている。
大道具さん達がトントンカチカチやったり、掃除の人が
一生懸命ゴミ拾いをしていたり・・・スタッフの姿しかない。
今日のセットはちゃんと動いたか。どこか落ち度はなかったか。
音響は大丈夫だろうか。
明日までにやるべき事は?
そんなスタッフの姿を見ていると、つくづく舞台というのは
自分一人で作っているのではない事を実感する。
普段は隠れて見えない場所にこそ、たくさんの人手がかかって
いるのだ。
その上にキャストはなりたっている。

氷高は客席にすわってぼんやりとその情景を眺めていた。
気分が落ち込んで仕方なかった。
外に出るのも嫌だ。ファンに囲まれ、何をどういう?
どんな表情をする?
湖条ファンだってたくさんいるのに。

こんなトップ代理ってあるだろうか。
こんなに気持ちが落ち着かない代役って。
どうして湖条は病気になってしまったのか。
わかってる。きっとそれは歌劇団のせいだ。
1作退団。
その知らせを受けた時は正直嬉しかった。
自分の時代がこんなに早く来ると思わなかったから。
「私は湖条さんよりも歌だって上手だし、演技だってうまい。
人気もる。歌劇団の期待も私に集中している」

そんな風に思っていた。

灯組は元々男役の宝庫で、新人はなかなか出世出来ない。
序列が厳しいからだ。
実力は絶対に自分の方があると思っていても、自分の前には
常に湖条が立ちはだかっていた。
憎たらしい・・・さっさと辞めればいいのにと思ったのも事実。
でも実際に湖条が病気になって、いざ、トップの代理を
させられてみると、そのプレッシャーたるや半端なものではなく
しかも、反発も大きい。
これは決して美しい継承劇ではない。
トップから次のトップへ引き継がれる技もなければ
思いもない。

私だったらたまらない
と氷高は思った。
こんな風に自分のさよなら公演を休演させられて
病院のベッドの上。しかも、舞台は何事もないように
続いて行く。こんなの許せない。悲しすぎる。
そう思っただけで、ほんの少しでも湖条の退団を望んだ。
自分が許せなくなる。罪悪感でいっぱいだ。

どうしたんだ?」
そこに現れたのは春樹だ。
春樹は細かいチェックをスタッフと一緒にしていたようだ。
まだ帰らないのか?そとは雨だぞ。ファンも待ちくたびれてる」
私、もう出来ません。明日から舞台に立てません」思わず氷高が大声をあげたので、スタッフ一同振り返って止まった。
「ああ、いいんだ。少しはずしてくれ
春樹は手を上げ、スタッフはあっさりといなくなった。

「何でそんな事を?もう東京公演は始まったし、お前も
吹っ切れたんじゃないのか?」

でも、あまりにも辛くて。観客の視線が針のように思えて」知らないうちに泣きじゃくっている。
みんな、怒ってます。きっと。こんな事、許されるものじゃありませんし」
あーちゃん、こっちへおいで
春樹はひょいっと銀橋の上に乗って氷高を呼んだ。

氷高は黙って銀橋に上がった。いつも歩き慣れている銀橋。
そして先には大きな舞台が「素」の状態である。
「ここは、今まで沢山のスター達の無念の思いを吸い取って来た場所だ」
春樹はゆっくりと語り出した。
「誰もがトップになれるわけじゃない。歌劇団90年の歴史の中では
沢山の生徒が志半ばで退団を余儀なくされてきた。悔し涙を沢山
吸い取って来たのがこの床なんだよ」

「沢山の涙を」
「そう。そしてトップスターというのはそういう過去の亡霊の上に
成り立っているんだ。背中に沢山の思いをしょって」

春樹は舞台の上に座り込んだ。
ライトや客席が全部見える。全てが自分の手の中にあるよう。
普段は意識した事がなかったが、その光景は
氷高にとっても新鮮な驚きだった。

「だから最後に階段の真ん中に立つ人間は
どんな時も威厳をもって完璧であらねばならない。
疑問を持たれるようではいけないんだ。
あーちゃんは次期トップスターだろう?そしていち早く
試練を迎えたんだ。今、そんな風に落ち込んだりしたら
今までここで無念の退団をした人達に顔向けが出来るか」


氷高は床を見つめた。
涙すら許されないのがトップスターの試練。

氷高は立ち上がった。
あーーちゃんさーん。早く帰りましょうよ」
下級生が入口の所でしびれをきらしていた。
そとは雨ですよ」
「今いく」

氷高はそっと春樹に頭を下げるとすっと銀橋から降りた。
外は土砂降りの雨だった。


# by fhiragi2006 | 2009-07-17 16:27 | 虹の飛翔

悲しき退団16

東京の初日の幕が開いた。
あらゆる意味で、出演者も観客も緊張して迎えた初日。
幕があがり、オープニングと同時に現れた氷高に
盛大な拍手が起きる。
衣装はそのまま湖条のものだ。
無論、湖条とはムードも立ち姿も何もかも違う。
春樹はなるべく湖条のイメージを払拭しようと
あちこち振りに手を加えて、氷高でも違和感がないように
仕上げたつもりだった。
今のところ、それは成功しているように見え、芝居の間中は
客席はとにかくしんとしていたし、拍手があるべき場所では
きちんと拍手をしてもらえた。

緊張しまくっていた氷高をはじめ、組子の面々は
とりあえずブーイングが起きなかった事でほっとした。
特に氷高は青ざめたままだったので、その頬に
少し赤みがさした事で、春樹も組長もみんなほっとしたのだった。

けれど、ショーになるとやっぱり雰囲気が変わった。
これはきっちりと「さよなら」モード全開の作品だったので
作りかえるわけにはいかず、主役の不在をどう埋めるのかが
腕の見せ所だ。しかもいない主役をないがしろにせず。

ショーが始まると、何となく客席の雰囲気が変わっていくのを感じた。
気まずいというか、居心地が悪いというか。
それはフィナーレ近くの黒燕尾のダンスで最も顕著に表れた。
別れの曲を背景に主役が男役達に別れを告げるような
振り付けになっていたのである。
客席は凍りついていた。

しかし、大階段には電飾で「MIORIN」と描かれて
氷高がど真ん中に立とうとやっぱりそこにいるべきは
湖条であると誰もがわかって・・・・
踊っている氷高の瞳から大粒の涙がこぼれおちた。
出来れば今すぐに舞台のそでに引っ込んでしまいたい。
こんなの嫌だ。
こんな代役は本当に辛い。

雰囲気を察したのか、客席から拍手がわき上がる。
その拍手で氷高はふっと我に返る。
今は泣いている場合じゃないのだ。
歯をくいしばって氷高は踊った。

そしてパレード・・・・
当然大階段を一番大きな羽根をしょって降りて来るのは
氷高。
精一杯の笑顔を見せた。
初めて歌劇を見る人もいるはず。
個人的な感情であれこれ言っている場合じゃない。
それは心に響く思い。
盛大な拍手が鳴り響く・・・・・

「本日は灯組の公演にお越しいただきありがといございます。
皆様もご存じのように湖条未央は病気の為、東京公演を
休演させて頂いています。
さよなら公演なのに、このような事になり、みおりんさんも
心から申し訳ないとおっしゃってました。
でも、一日も早く回復してみな様にお姿をお見せ出来る事を
確信しています。
本日は本当にありがとうございました」


ファンのすすり泣く声が聞こえた。
春樹もそっと目がしらを抑えた。
休演を余儀なくされた湖条も可哀想だ。
でも、それを支えなければならない
氷高もまた可哀想だ。
夢の世界で夢を与えながら、流される涙の
なんと多い事か。
それを考えると胸が痛むのだった。

# by fhiragi2006 | 2009-07-15 19:55 | 虹の飛翔

悲しき退団15

灯組の稽古場の雰囲気は微妙になっていた。
本来、湖条が行う筈のさよならディナーショーも
中止になり、その代わり、共に退団する予定の
生徒達によるショーに振り替えられた。
振りかえられた生徒達は突貫工事で稽古に
励み、上京する。
しかし、チケットの売れ行きはいま一つ。
ファンクラブはやっきになってチケットをさばき始めた。

一方、東京公演の稽古も早めに始まり、役が変わった
それぞれがいちからやり直しを求められていた。
主役を務める事になった氷高は3番手から昇格になった
翠川礼と一緒にセリフを覚えなおし、相手y拓の咲あすかに
色々なおして貰いながら稽古に励む。
あわただしさと一緒にどんよりした空気も流れ、
春樹も神もどうしたらいいか途方にくれていた。
一口に代役とはいっても普通の芝居とは違う。
歌劇団のトップスターは組の頂点に君臨する王である。
トップスターにしか許されない靴、羽根、衣装、その他もろもろの
しきたり。
それらを二番手が代行するというのは、越権行為の一つであり
本来は許される筈のないこと。
それを堂々とやらねばならないのだから、プレッシャーは倍かかる。

ほんの数週間で氷高は数キロ痩せ、ほほもコケ始めた。
元々は尊大で自信家の彼女だったが、今はそんな態度は
微塵もみせず、楽屋入りも出も控え目で、なるべく湖条のファンを
刺激しないように努めた。
派手な行動は慎むようにとの組長からのお達しもあり、組子は
とにかく「役が上がった」「嬉しい」などという顔は見せないように
厳命された。

衣装部も大変だった。
作り直すわけにはいかない衣装。
しかし体型が違うのでそのままでは入らず、
大至急直しをしなければならないのだ。
湖条が全く復帰しないまま千秋楽を迎えるのか
そうでないのか、まだ行方がわからないので
どちらにも対応できるような柔軟な大勢が求められる。
毎日、新しい事を覚えさせられ、形が変わっていく。
生徒も演出家もヘトヘト状態。

特に神はフィナーレを何とか湖条の栄誉をたたえつつ
氷高にもそれなりの体裁を当てなくてはならないので
大変だった。
舞台の照明やらセットやらの動かし方を微妙に変えては
試験してみて、さらに納得がいくまでやり直す。

春樹の方も、本来、湖条にあてがきした作品を
正反対の氷高が演じる事に慣れるため、もう一度セリフを
書き直したり、より有効な演出方法を考えたりした。
辛いのはみんな同じなのだから。

東京公演の前に記者会見があり、演出家と氷高・咲あすかと
翠川礼が出席した。
氷高のあまりの痩せっぷりに記者達は動揺し、笑顔がこわばって
今にも泣きだしそうな雰囲気にざわざわざとざわめいた。
先導を仰せつかっている春樹はなるべく明るい雰囲気にしようと
「灯組一同、湖条が一日でも早く復帰を果たせるように祈りつつ
留守を預かる気持ちで頑張ります」

と挨拶してしめた。
しかし、氷高は
湖条さんの分まで頑張ります
としか言えなかった。

まるではれものに触るような雰囲気の中で氷高は緊張しつつ
初日を迎えた。

# by fhiragi2006 | 2009-07-07 16:09 | 虹の飛翔

悲しき退団14

湖条未央休演のお知らせ
かねてよりの体調不良に伴い
東京公演を休演させていただきます。
なお、代役は氷高あさとで、順次繰り上げになります。
湖条復帰の見通しはまだ立っておりませんが
回復し次第お知らせいたします」


そっけない文章が歌劇団の公式HPに載せられた。
けれど、そのそっけなさと裏腹にマスコミは盛り上がった。
前代未聞!!さよなら公演でトップ休演」
「公演中止を求める声」


歌劇団への電話も連日鳴りやまない。
湖条さんのさよなら公演なのに休演するなんて
おかしい。公園を中止して下さい」
「ファンの気持ちも考えて下さい。
そもそも1作で退団させる方がおかしい」


等など、色々たまっていたものが一気に
噴き上がるように次から次へと抗議の声が上がる。
東京公演不買運動しよう」
という声まであがり、HPや掲示板は大いに盛り上がった。

被害は歌劇団だけでなく、代役が決まった氷高の
方にも及んだ。
毎日届くファンからの手紙の中にいやがらせや
カミソリのようなものが入っている事が多くなった
のだ。
湖条のファンと氷高のファンが一触即発の喧嘩を
始めるにいたっては、歌劇団も黙っているわけにも
いかず、両者の代表を厳しく叱責した。

そうはいっても女の子ばかりの集団。
判官びいきも手伝って氷高への風当たりは
強まるばかり。
本当は狙っていたんじゃないの?代役」
「二番手のくせに大階段を羽根しょって降りてくるんだーー
すごい神経してるよね」

その一方で氷高ファンも負けてはいない。
「湖条さんより上手だから。あーちゃんは」
「めったにないことだから楽しむ」


それをさらにマスコミが煽り、大劇場のわずかな映像と
一緒にワイドショーコメンテーターが劇場前で
レポートする場面も見られた。

春樹は榎田理事長に呼び出されていた。
「湖条の具合はあまりいいもんじゃないらしい」
開口一番理事長はそう言った。
組長も頭を抱えていた。湖条本人がなかなか
心の整理がつかずに色々いうもんでな」


それはそうだろう)
春樹は心の中で言った。
入院した時、春樹も付き添ったのだが
泣きじゃくってどうしようもなかった。
他に彼女の母親やファンクラブの代表も
いたのだが、その嘆きようは思わず貰い泣き
してしまう程で、さすがの春樹も胸が痛くなった。
もし自分なら、やっぱり公演を延期するくらいの
事はやったかもしれない。
けれど劇場は稼働してこそ収入をえられるので
丸丸一か月以上公演を中止するわけには
いかないし、他の組と入れ替えるにしても間に合わない。
他の劇場なら、他の劇団や歌手芝居でつなぐ所だろうが
歌劇専用になっているのでそれも出来ない。
まさに踏んだり蹴ったり。
泣きたいのはこっちの方だ」
と理事長は吐き捨てるように言った。

氷高他の生徒達の稽古は進んでいるのかね」
「はい。セリフはかなり入ってますし、後はこまごまとした
振り写しという事で。ショーの方も神が頑張ってくれて
ますので」

そうか」
ひとまずほっとしたような顔になる。
私が非情なのはわかっているんだよ。
しかし、商業演劇の世界というものは
そういうもんだ。仕方がないんだ」
わざわざ自分に言い訳しなくても・・・自分は
ただの愚痴聞き役なのかと春樹はうんざりする。

理事長室を出ると、そこに小石川がいた。
やあ、気の毒だったな
相変わらず無神経なもの言いだ。
理事長の娘との結婚を控えて何かと浮かれているのかも
しれないが、よくこんな軽薄な男と結婚しようという
女性がいるものだ。
何がだよ
「湖条さ。脊髄炎ってのは再発するらしいから
例え治っても一生付き合っていかないとな。
まあ、お前も色々大変だよな」

「お気遣いどうも
いや、心から同情しているんだよ。芝居もショーも
やり直しじゃ大変すぎるって。
生徒のメンタル面も心配だしな」


もうこれ以上は話したくないと思って通り過ぎようと
した腕を抑えられて、春樹は一瞬ぎょっとした。
妙に小石川の目線が真剣だったからだ。
な・・・なんだよ
1作退団はこれからも続くぞ」
「え?」
「最近はよくわからなくなった。俺も」
手を上げて小石川は笑った。

# by fhiragi2006 | 2009-07-01 15:12 | 虹の飛翔

悲しき退団13

とうとうこの時がやってきてしまいました
大劇場の大階段を袴姿で降りてくる。
現実ではないみたい。
湖条は下級生に支えられてゆっくりおりた。
もう隠し通す事も出来ない。
客席がざわめいている。

湖条はマイクの前に立った。
組長が心配そうな顔で見ている。
そちらにふっと笑いかけて、それから客席を見た。
退団したいわけじゃない。
今だって・・・・もっとトップ生活を謳歌したい。
その為に頑張って来たんだもの。
それなのになぜ今、ここにこうして立っているんだろう。

マイクの前に立てばそれでふっきれると思ってた。
でも実は正反対。
未練が後から後からやってくる。
しかし、いつまでも沈黙しているわけにいかない。
湖条は観念した。

「すみません。もう足が動かないんです」
最初に口にしたのはこの言葉だった。
実は初日を迎えるとちょっと前から調子が悪くて。
病院に行って治療したりしていたのですが
何分にも舞台が最優先だったので
無理してしまいました。
でも、千秋楽までとにかく頑張る事が出来て
嬉しい・・・・です。
16年間、この舞台の真ん中に立つ事を夢見て
頑張って来ました。
今、思うと、本当に様々な思いでがよぎります。
私にとってこの歌劇団は青春そのものでした。
その青春の園を出ていくことはとても寂しいです。
寂しいけど、新しい人生の門出と思って欲しい。
ファンの皆様、スタッフの皆様、そして
私の大事な組子達。本当にありがとうございました」


それだけ言うのが精いっぱいだった。
あとは本当に泣いてしまいそうで。
カーテンコールの拍手が鳴りやまなかった。
客席は涙にむせいでいる。
でも、湖条には泣いている暇はなかった。
鳴りやまない拍手もそこそこに病院へ運ばれたのだった。

正式な病名もやっぱり「脊髄炎」
それもステロイド治療を余儀なくされる程の事態。
2か月後に迫った東京公演は・・・・休演するしかなかった。

# by fhiragi2006 | 2009-06-26 15:53 | 虹の飛翔

悲しき退団12

その日はやってきてしまった。
朝から劇場前は真っ白な会服で染まり
もうすぐ冬がやってくる空は気持ちいいほどに晴れ
そして落ち葉は絨毯のように地面を覆っていた。

湖条は泣きたいのをこらえて車に乗り込んだ。
足は・・・」
代表の言葉にうっすらと笑ってみせる。
もう全然ダメみたい
でも、今日一日は踊って歌わなければ。
誰にも体調不良を気づかれてはならない。
晴れの「卒業」の日だというのに笑みがこぼれる
わけでもなく、さびしさよりも悲しさが先に立つ。

劇場の前には沢山のファンが群れをなしている。
そこに車で乗り込んだ湖条は白い色の波に
酔いそうになった。
こんな自分を応援してくれている。応えなければ。
何としても。

湖条は満面の笑みをたたえて車を降りた。
きゃーーっと黄色い声が上がる。一斉にふられる白いハンカチ。
そして楽屋の前には組子達が輿を持って出迎えてくれた。
これに乗って下さい
娘役の礼がにっこり笑って促した。
でも私、重いよ
冗談でいいつつそっと輿に乗る。
すると一気に上にあがって、そのままファンの間を練り歩いた。
なるべく足に負担がかからないように揺らさず、でも勢いは
つけて・・・と、何だか難しい事を必死にやってくれている組子達。

今まで退団したトップスターはみんな一様に
「組子全員が愛しい」という言葉を残している。
まさか、そんな事があるわけないと思っていた。
でも今はわかる。
こんな風に楽屋入りする自分の為に貴重な時間を使って
お祭り騒ぎを演じてくれているのだから。
やっぱり愛しい。
10年以上もずっと一つの組でやってきた事実。

これこそが青春。その青春を一緒に過ごしてきた
仲間たち。本当にこの歌劇団の中での経験は
基調であると同時に人生そのものだった・・・・と。
輿の上で湖条は泣いた。
涙が止まらなかった。
その涙にファンたちの間からも嗚咽が漏れる。
組子達だけじゃない。ファンにとってもまたスターは
青春や人生そのものだ。
下級生からずっと応援して手紙をくれたファンたち。
時には辛口批評もあって気を悪くした事もあったけど
でも、今、「一作退団」の汚名を着ている自分を
実捨てず応援してくれているファンの子達。

ありがとう・・・・叫びたかった。
本当にありがとう・・・・・
でも今はもう涙をふかなければ。舞台が待っている。
湖条は
行ってくるねーー
と大声で言った。
そして大きく手をふった。

# by fhiragi2006 | 2009-06-24 09:35 | 虹の飛翔

悲しき退団11

次の日、早速組長と副組長を呼び出して事の仔細を話し
対策をたてる事にした。
「みおりんがとにかく千秋楽まではこのままでと
いうので、何とか協力してもらえないか」
組長はふうっとため息をついた。
こんな悲しいさよなら公演はありません
春樹もため息が出そうだった。
みおりんの為に出来る事なら何でもしますから」
組長も副組長も快くそう言ってくれたので
春樹は早速、芝居のダンスシーンの振り付けを少し変える
事にして振付家を呼んだ。
それから組子に説明しなくてはならないので、
組長の方から楽屋で話してくれるように言った。

春樹はその後、スタッフとのこまごまとした打ち合わせで
よくわからなかったのだが、楽屋は涙にくれたという。
ショーの神にも連絡をした。
ショーの場合、すぐにあっさりと変えるわけにはいかず
何とか体が持つ限りそのままで行くという方針になった。

湖条は楽屋でみんなが泣いてしまった時、本当に心が
やるせなくなって、一層悲しみが募ってしまった。
自分が病気である事はもしかして全部夢なのではないかと
ついさっきまで考えている自分がいたのだ。
しかし、実際に組子においおいと泣かれてしまっては
現実として受け止めざるを得ない。
なるべくみんなに迷惑をかけないように・・・・
そして少しでも元気なふりをしなくてはならない。

薫の君も・・・・」
湖条はぼそっと呟いた。
薫の君もこんな思いを抱いたのでしょうか」
その言葉を聞いた春樹は小さくうなづいた。
そうだな。だが、あいつは不治の病だった。
でもみおりんはそうじゃない。
いいか、今はどんなに屈辱的だと思っていても
でも生きる方がいいに決まっている。
この状況を何とか乗り越えれば、きっといい事が
待っているから」

湖条は黙っていた。

そして今日も幕が上がる。
本当に不思議だったのだけど、いざ舞台に出ると
足は動く。何とか動く。
まだごまかしが効く。大丈夫。
湖条は自分に言い聞かせた。
スポットライトが好き。大きな羽を背負うことの素晴らしさ。
ひたすら、それを楽しむ事にして
湖条は必死に動かない足と闘い続けた。

最初で最後のトップスターとしての公演。
何とかまっとうしなくては。
そうしなくては一生悔いが残る。
一日が早く終わればいい・・・・いや違う。
もっとゆっくり喜びを噛みしめさせて。
千秋楽なんか来て欲しくない。
いや、でも来てくれないと明日の保障はない。
そんな相反する感情にさいなまれながら湖条は
必死に演じ、歌い、踊り続けた。
無理に体を動かしているので、額から滝のように
汗が流れおちる。
よろめく筈のないピルエットで一瞬足が滑った。
娘役のリフトはもうどうしても無理だったので
カットする事にした。

日が経つにつれて、ファンの間から心配の声が上がり始める。
どこかお悪いのでしょうか?とても心配です」
と書かれた手紙が多くなる。
ネットでは「病気か」「いや、単に疲れているだけ」
などと書き込みが増え、ファン同士の言い争いにまで発展。
病気と疑うファンは本当のファンではない。最後まで信じる・・・などという
意味不明な書き込みが増えて。さらにエスカレートし
プロなら疲れた風情を見せるべきじゃない
などの厳しい意見もあり、喧嘩にまで発展した。

湖条自身、そういう疑いの目で見られているのは
ひしひしとわかったが、とにかく千秋楽までは沈黙に終始した。

そしてやがて来る筈の千秋楽がやってきた。
秋が終わろうとしていた。

# by fhiragi2006 | 2009-06-18 17:53 | 虹の飛翔

悲しき退団10

春樹は夜中にも関わらず、直接榎田理事長の自宅におしかけた。
榎田理事長は関西でも有名な資産家の一人で
その自宅はT士の中心部から少し外れた山沿いにあり、
神の家とも近かった。
このあたりは豪奢な屋敷が多く、そのほとんどは
大正期の土地開発で作られたものであり、その昔は
庶民がちょっと月賦で帰るくらいの値段だったのが
今ではすっかり高級住宅街と化している。

夜中にも関わらず、理事長は快くあってくれた。
春樹の事はお気に入りなのだ。
ブランデーはどうだね
いえ・・・すぐにお暇しますし、それに車ですから」

車?ならうちの運転手に送らせよう。君の車は
明日にでも取りにくればいい」
半ば強引な誘いだった。断れるはずない。
春樹は黙って一礼した。

春樹は薦められるままにブランデーを口にして
それから湖条の診察の経過を話し始めた。
脊髄炎だって?それは治るのかね」
初耳の理事長はひどく驚いていた。
いや・・それは狼狽といってもいいかもしれなかった。
かつてトップスターの病気・怪我などは多々ある。
休演も珍しくはない。
しかし、さよなら公演中の故障というのはありえなかった。
かつて震災で大劇場が使えなくなった時、
ちょうどさよなら公演を始めたばかりのスターが
代替えで大阪の舞台を使った事はある。
しかし、それは本人の故障でもなんでもない。

「脊髄炎というのはどんな病気なのかね」
「はい。原因はいろいろあるようですが、一般的には
ウイルス性のようです。四肢にマヒが来て歩けなくなったり
ひどくなると呼吸困難も。ストレスが原因の場合もあるし
さらに女性特有のホルモン系が原因の場合もあり。
つまり、膠原病とか。そういうのになると治療も困難なようですが」

「で、湖条はどうなんだ?」
「今は一番軽い症状の段階で薬を出して貰っています。
でも、今日の検査結果次第では入院ステロイド剤の投与を受け
リハビリをしないといけないと」

「うーん」
理事長は考え込んでしまった。

全面的に休演は出来ませんか」
春樹は思い切って言ってみた。
通常公演ならともかく、今回は湖条の為の公演だ。
その主役が病気である以上、代役を立てる意味がない。
春樹は心からそう思っていた。
今回ばかりはなんとか湖条の為にも本人の舞台を
まっとうさせてやりたかった。


「1週間全面休演にして、次の空組を先に上演し
年明けからまた始めるとか」

稽古がついていってない」
それはわかってる。
しかし、春樹は尚も食い下がった。
音楽も衣装も出来てます。セリフも入ってるし
あとは細かい演出のみでしょう?
彼らなら多少稽古不足でも」

後宮君」
理事長の面はかなり厳しいものになっていた。

君だってこの業界で仕事をしているんだ。
商業演劇の世界がどれほど厳しいものかわかるな?
一公演無くなったらどれほどの損害が出るか。
この経済的に厳しい状況下でそのような事は出来ない。
また、スケジュールは年間を通して決まっている。
東京での通常公演に加えてプチ・シアター、全国ツァー
それらのスケジュールも動かせない。
とすれば、出来る事はただ一つ。湖条の代役を立てること」


春樹は眼を閉じた。
眼の後ろに悲しげな湖条の表情が浮かび上がる。
でも、湖条が出ないならチケットの払い戻しがあるかもしれませんよ」
それはあるかもしれないな。しかし新しい主役のチケットも売れるはずだ」
ネットでどんなに叩かれるか
「仕方ない。とにかく新人公演の・・・」
それならせめて大劇場だけでも本人にやらせて下さい」
「後宮君」
何としてもすぐに振り付けを変えますから

これ以上理事長と話しても無駄だ。
歌劇団とはそんなに優しい劇団ではないのだ。
出来るのかね。というかあと半月を湖条がもつのかね」
持たせるし、持つと言ってます。代役は東京で」
東京で氷高あさとを主役に据える」

春樹は絶句した。
氷高あさと。次期トップスターである。
これは前代未聞の話だ。
トップスターのさよなら公演の主役に次期トップが
つくなんて。
単に主役を張るという以上の重みと特権がトップスターには
ある。

大きなナイアガラつきの羽根をしょって、大階段の一番上から
組子に迎えられておりてくる。
衣装だって照明だってトップにしか許されない事が多々あり
それだけ組の中のピラミッド構造ははっきりくっきりしている。
ゆえに、次期と名がつく人は「正当な後継者」であり、
トップスターから組の伝統と王座を継承するわけだ。

そういう儀式を繰り返す事で、歌劇団は新陳代謝をスムーズに
はかってきた。
偉大なる年功序列とピラミッド型の身分制度。
その一端を崩す・・・というか、目によっては「簒奪」とも
受け取られかねない行為・・・それがトップの代役。
本人にはその気がなくても、蔭口は叩かれるだろうし
判官びいきが好きな日本人の事、氷高にどんな攻撃の刃が
向けられるか。
それにあの子は耐えられるのか?
それだけではない。湖条だって、涙を飲んで退団するのに
その原因の一端とも言える氷高が自分の代役をやる事に
どんな思いを抱くだろうか。

新人公演の主役で・・・・」
いや、復帰が未定になる以上は仕方ない。
氷高にやらせる」


絶望的な思いが頭の中でガンガンと鳴り響く。
春樹はあまりにも自分の無力さに今にも泣きそうになった。
こんなにもこの劇団は冷たいのか。
自らの音楽学校で大切に育てて来た一人の人間を。
女の子としての青春を封印して夢の世界の住人である事を
選んだけなげな生徒を、心を壊し、プライドを引き裂いて
退団させてしまう。
もし、これが通常のお披露目公演だったら・・・・
1作くらいは仕方ないと思ったかもしれない。
しかし、これはいいかい限りのお披露目とさよならが同時の公演
なのである。
そうしたのは歌劇団理事長の榎田である。

情けなさと怒りで春樹は黙り込んでしまった。

後宮君
理事長は少し声のトーンを落とした。
わかってくれたまえ。商業演劇とはそういうものだ。
個人の事情を慮る事は出来ない。
年間のスケジュール。そして稽古に舞台と決まっているもの
からはみ出したら全てが混乱してしまうのだ」


それはわかってる・・・・
心の中で春樹は叫んでいた。
わかっているからこそ、何とか解決策はないかと。
せめて今回だけは去っていくトップスターの為に
異例の処置をしてほしいと思っているだけだ。

「わかっています」

春樹はそう言うしかなかった。
スタッフを集めて何とかしなくては。
頭はもう次に動くしかなかったのだ。

# by fhiragi2006 | 2009-06-16 15:54 | 虹の飛翔

悲しき退団9

脊髄炎です
お忍びで神戸へ行き、こっそりと検査した。
湖条に付き添ったのはファンクラブの代表と
春樹だった。
かつて、この病院には薫が入院した事がある。
その思い出が苦い味を思い出させる。
しかし、秘密を保持してくれるのもこの病院なのだ。

湖条はまる一日かけて検査をした。
その結果が「脊髄炎」だった。
「脊髄炎は原因不明の事が多いのです。
ウイルスが原因とされていますが、ストレスなども
原因になりうる事もありますし。症状も様々で」

医師が詳しい説明をしてくれた。
それで治るのですか?」
焦って彼女は聞いた。
側にいる春樹の顔も心なしか青ざめている。

まず入院して投薬治療を。それが済んだらリハビリで。
リハビリは数か月かかります」

ちょっと待って下さい。私、今は入院出来ないんです。
それにリハビリって・・・このままじゃもっと悪くなるんですか?」

歩けなくなりますよ

歩けなくなる・・・・
湖条は言葉を失った。
その言葉に春樹もまた黙ってしまった。
どうしたらいいのだろう。まだ舞台がある。
途方にくれた湖条は不安げな目で春樹を見つめた。

舞台は無理でしょう。すぐに入院しないと症状が
進む恐れもありますし。それに今だってもう歩くのが
大変なのではありませんか?」

医師にそう言われてさらに言葉を失う。
「それでも今は入院出来ません。
せめて千秋楽が終わるまで。それまで待って下さい」
湖条は必死に頼み込んだ。

それではさらに検査してもっと詳しい原因を調査しましょう。
その上で薬を出しますから」

という事で休演日をまるまる犠牲にして湖条の検査は続いた。
結果はすぐには出ないので、とりあえず抗ウイルス薬を貰い
帰る事になった。
もし排尿異常などが出たらすぐに来て下さい」

すでに足の麻痺は進み始めていた。
春樹も湖条も黙ったまま。
車を運転していたファンクラブの代表が不安そうに聞く。
どうしますか?このまま治療をしないわけにも」でも、私の最後の公演なのよ」
激しい口調で言葉をさえぎる。
みおりん、落ち着きなさい」
「でも・・・でも・・・・」
不安なのは代表君だってそうだよ。みおりんだけじゃない
でも・・・・」
湖条のトーンは落ちたが、イライラ感と理不尽さに
体の震えが止まらない。

なぜこんな大事な時期に病気になるのか。
なぜ今なのか。
神様は自分に意地悪をしているのか?
私にとってこの歌劇団とは一体何だったのだろう。
絶望の淵に体が沈んでいく。
きっと、色々思い悩んで・・・ストレスがかかったんですよ」
代表は強い口調で言った。
普通にお披露目だったら少しくらい休演しても」本当にそうなのだ。
けれど・・・このまま麻痺が続いたら。

少し、振り付けを変えてもらおう。それから事情は理事長に話して
とにかく大劇場の千秋楽までは休演せずという話をするから」

はい
もうそれしか方法はなかった。
ネット上ではすでに湖条の足がおかしいというのは書きこまれている。
疑いを持って見られている。

T市に戻ってきた時は深夜で疲れ切っていた。
春樹はそのまま劇団事務所に戻り、湖条は自宅に戻る。
動けないと何もできないだろうと代表が泊まり込みで
付き添ってくれる事になった。
舞台に乗っている時は大丈夫なのに、帰ってくると
見事に足が動かなくなる。
動けなければ着換えも出来ない・・・・情けなかった。
そしてこんな自分に尽くしてくれる代表にも申し訳なかった。

ごめんね。本当に。私のせいで
気弱な事をいう湖条に代表は努めて明るく笑った。
大丈夫ですよ。みんなみおりんが元気でいてくれる事を
望んでいるんですから。でも仮に休演になったとしても
責めません。とにかく一日も早くよくなって欲しいんです」


気休めにしかならないだろう薬を飲んで、湖条は眠った。

# by fhiragi2006 | 2009-06-11 17:35 | 虹の飛翔

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