2009年 07月 22日
悲しき退団18
こんな光景はみたくなかった。
劇場の袖で芝居をみながら
湖条はみじめな思いで一杯になった。
入院して一日千秋の思いでリハビリに励んだ。
医師からは無理をするなと言われ、それでも
頑張るしかなかった。
一日も早く復帰しなければ・・・私の舞台が奪われてしまう。
ファンクラブも家族も気をつかって舞台関係のものは
一切そばに置かなかったけれど、でも自然と
話題は入ってくる。
季節はどんどん移り変わっていくようだし、
カレンダーの数字もどんどん進んでいく。
焦りと思うように動かない体を抱えて
それでも必死にリハビリをするしかないのだった。
湖条が何とか(無理やり)退院出来たのは千秋楽の
一週間前だった。
病院からかけつけたのは稽古場。
理事長への挨拶もそこそこに稽古着に着替える。
しかし、足はやっぱり思うように動くはずがなかった。
元々体力も落ちているし、退院したばかりだし。
それはわかっていても悲しかった。
芝居に出るのはやはり無理だろうという事で
湖条はショーの最後の場面一つとフィナーレの
階段おりだけ・・・その階段も無理という事で
セリ上がり、羽根は負担なので肩につける羽根を
使用する・・・と決められた。
振付家は足に負担がかからないような振り付けを
必死に考え、歌唱指導の先生は、とにかく声を出させる
事に集中した。
衣装部はフィナーレに似合う羽根を一生懸命に考えて作り
ブーツの底も多少低くした。
これだけ至れり尽くせりをしてくれたのは劇団のわずかながらの
温情か。
二日間の稽古を終えて、初めて劇場に姿を現した時、
車いすに乗っての登場だったが、劇場を取り囲む全ての人から
拍手が沸き起こった。
本当に温かい拍手で、思わず胸が熱くなる。
特に湖条のファンクラブの面々はこの時を待ってましたと
ばかり花束を渡し、手紙を渡し、そして得意げに拍手し
中には泣きだす子もいた。
湖条の車いす姿はどこまでも痛々しく見えたのだ。
喜びは一転不安になる。
(車いすに乗っている状態で大丈夫なのだろうか)
という不安だった。
その不安を打ち消すように湖条はにっこりと笑って手を振った。
「ありがとう。大丈夫だからね」
そう大声で叫ぶとわあっと歓声があがった。
楽屋前には氷高始め組長や組子が揃って出てきて
拍手して迎えた。
氷高は真っ先に車いすを押してくれる。
「待ってたんですよ・・・・本当に」
みんなしくしく泣いていた。
「うん・・・ごめんね」そう答えるしかなかった。
今は迎えてくれた全ての人に感謝しなくてはならない。
けれど・・・
実際に自分がいない舞台を見ていると、別な感情が
わき上がってきたのだ。
今まで、あの舞台に立つ事を当たり前のように思って来た。
毎日毎日、震災の時ですら、すぐに再開するだろうと思って
さして心配もしなかった。
舞台に立つ自分。この歌劇団で演じ、そして歌ったり踊ったり
する自分はそれが仕事で当たり前なのだった。
けれど・・・今、自分がいない舞台の上でみんなが
楽しそうに演じている。
その姿を見る事になるなんて思いもしなかった。
排除されたというか、押し殺されたというか・・・
惨めというよりそれは信じられない光景に見えた。
悲しみが襲ってきた。
そして猛烈な怒りが・・・・
湖条はどんどん唇を震わせ、ほほから涙が落ちるのを
ぬぐいもせずに舞台を見つめていた。
劇場の袖で芝居をみながら
湖条はみじめな思いで一杯になった。
入院して一日千秋の思いでリハビリに励んだ。
医師からは無理をするなと言われ、それでも
頑張るしかなかった。
一日も早く復帰しなければ・・・私の舞台が奪われてしまう。
ファンクラブも家族も気をつかって舞台関係のものは
一切そばに置かなかったけれど、でも自然と
話題は入ってくる。
季節はどんどん移り変わっていくようだし、
カレンダーの数字もどんどん進んでいく。
焦りと思うように動かない体を抱えて
それでも必死にリハビリをするしかないのだった。
湖条が何とか(無理やり)退院出来たのは千秋楽の
一週間前だった。
病院からかけつけたのは稽古場。
理事長への挨拶もそこそこに稽古着に着替える。
しかし、足はやっぱり思うように動くはずがなかった。
元々体力も落ちているし、退院したばかりだし。
それはわかっていても悲しかった。
芝居に出るのはやはり無理だろうという事で
湖条はショーの最後の場面一つとフィナーレの
階段おりだけ・・・その階段も無理という事で
セリ上がり、羽根は負担なので肩につける羽根を
使用する・・・と決められた。
振付家は足に負担がかからないような振り付けを
必死に考え、歌唱指導の先生は、とにかく声を出させる
事に集中した。
衣装部はフィナーレに似合う羽根を一生懸命に考えて作り
ブーツの底も多少低くした。
これだけ至れり尽くせりをしてくれたのは劇団のわずかながらの
温情か。
二日間の稽古を終えて、初めて劇場に姿を現した時、
車いすに乗っての登場だったが、劇場を取り囲む全ての人から
拍手が沸き起こった。
本当に温かい拍手で、思わず胸が熱くなる。
特に湖条のファンクラブの面々はこの時を待ってましたと
ばかり花束を渡し、手紙を渡し、そして得意げに拍手し
中には泣きだす子もいた。
湖条の車いす姿はどこまでも痛々しく見えたのだ。
喜びは一転不安になる。
(車いすに乗っている状態で大丈夫なのだろうか)
という不安だった。
その不安を打ち消すように湖条はにっこりと笑って手を振った。
「ありがとう。大丈夫だからね」
そう大声で叫ぶとわあっと歓声があがった。
楽屋前には氷高始め組長や組子が揃って出てきて
拍手して迎えた。
氷高は真っ先に車いすを押してくれる。
「待ってたんですよ・・・・本当に」
みんなしくしく泣いていた。
「うん・・・ごめんね」そう答えるしかなかった。
今は迎えてくれた全ての人に感謝しなくてはならない。
けれど・・・
実際に自分がいない舞台を見ていると、別な感情が
わき上がってきたのだ。
今まで、あの舞台に立つ事を当たり前のように思って来た。
毎日毎日、震災の時ですら、すぐに再開するだろうと思って
さして心配もしなかった。
舞台に立つ自分。この歌劇団で演じ、そして歌ったり踊ったり
する自分はそれが仕事で当たり前なのだった。
けれど・・・今、自分がいない舞台の上でみんなが
楽しそうに演じている。
その姿を見る事になるなんて思いもしなかった。
排除されたというか、押し殺されたというか・・・
惨めというよりそれは信じられない光景に見えた。
悲しみが襲ってきた。
そして猛烈な怒りが・・・・
湖条はどんどん唇を震わせ、ほほから涙が落ちるのを
ぬぐいもせずに舞台を見つめていた。
# by fhiragi2006 | 2009-07-22 17:51 | 虹の飛翔

